導入前の提案プロセスには、どのような課題があったのでしょうか?
西原様(九州旅客鉄道株式会社 建設工事部 施設課 建築)
自治体などへの改修提案は、これまで自分たちで一からパースを作成していました。モデリングを行い、その後レンダリングをするという流れです。
1枚のパースを制作するのに、ざっくり1週間ほどかかっていたと思います。他の業務と並行して進めていたため、実際にはそれ以上の時間を要していた可能性もあります。
また、修正が入るたびに一連の工程をやり直す必要がありました。制作に時間がかかるため、検討の柔軟性を制限していたと感じています。

なぜ改修提案において「最初の方向性決定」が重要だったのでしょうか?
西原様
改修提案では、最初の方向性をどう定めるかが非常に重要です。受注が決まっている案件であっても設計は外注になります。そのため、その前段階で「どの方向性で進めるのか」を決める必要があります。
しかし、具体的なビジュアルを用意するには時間がかかります。計画部門での検討に時間がかかると、その後のプロセス全体にも影響します。計画段階の生産性がボトルネックになっていたと感じています。
なぜ計画部門でのAI活用に着目されたのでしょうか?
西原様
建設DXを進めている中で、その一環として画像生成AIの活用を検討しました。建物には計画・設計・施工・維持管理というサイクルがありますが、その中でも特に計画部門でAIを活用できるのではないかと考えました。
初期検討のスピードを上げることで、全体の生産性を高めたいという意図がありました。

数あるサービスの中で、Renderyを選ばれた理由は何でしょうか?
西原様
当初は他社サービスも試していました。ただ、改修提案で必要になる「一部だけを変更する」という操作が難しかったのです。
Renderyを展示会で知り、マスキング機能によって部分的な変更ができる点に魅力を感じました。また、日本語で扱えること、建築に特化していることも大きな理由です。建築用途を前提に設計されているため、実務に落とし込みやすいと感じました。
Renderyは、実務の中でどのように活用されているのでしょうか?
西原様
改修提案の初期段階で、複数のパターンを制作しています。ある案件では9パターンほど作成し、その中から自治体に方向性を選んでもらいました。
あくまで最初の意思決定のためのイメージであり、そのまま設計に使うわけではありません。方向性を共有するためのビジュアルとして活用しています。
新ヶ江様(九州旅客鉄道株式会社 建設工事部 施設課 建築)
Rendery導入後は提案資料のビジュアル作成を担当しています。最近は「AIアーキテクトと編集」機能を中心に使っており、変更が簡単にできるため扱いやすいと感じています。
抽象的な言葉からも空間イメージを引き出せるため、より具体的な条件を入れて提案のバリエーションの質の向上につとめています。
西原様
Renderyを実際の業務で試していく中で、どのような場面で活用できるのかを整理していきました。社内でも使いやすいように、基本的な操作方法や実務での活用例をまとめた利用ガイドを作成し、社内メンバーにも共有しています。

出所:九州旅客鉄道株式会社 西原様が作成されたRenderyの社内向け利用ガイド(一部抜粋)
導入によって、どのような効果がありましたか?
西原様
最も大きな変化は制作時間です。以前は完成まで約1週間を要していましたが、現在は1枚あたり10分未満で作れることが多くなりました。
工数の制約から1件に絞らざるを得なかったケースもありましたが、AIを使うことで複数案を提示できるようになりました。設計業務の初期段階で様々なパターンを提示することで、業務の手戻りが軽減されていると感じています。

出所:九州旅客鉄道株式会社が実際に使用しているプロジェクトボード(一部抜粋)
今後、どのような広がりが期待できるとお考えでしょうか?
西原様
今回の取り組みは、計画部門での活用から始まりましたが、建築だけに限らない可能性を感じています。土木分野や、駅の有効活用を検討する部署など、空間を扱う業務であれば応用できる余地があると考えています。
提案業務は時間との戦いですが、短時間で複数案を提示できる環境が整えば、検討の幅も広がります。計画段階での意思決定が早まることで、その後の工程にも良い影響が出ていると感じています。
新ヶ江様
私は建築の専門ではありませんが、実際に提案資料の作成を担当できています。専門部署に限らず、提案や企画に関わる人材が使える点は大きな可能性だと思います。
操作は非常にシンプルなので、まず触ってみることが大切だと感じています。建築出身でなくても活用できている点は、一つの実証だと思います。
まとめ
本事例は、パース制作の効率化にとどまらず、計画段階における意思決定スピードと提案機会そのものを拡張する取り組みといえます。
制作工数の削減により、検討の幅が広がり、結果として工事獲得の機会創出にもつながっています。また、建築専門職に限らず活用できる点は、組織全体の提案力強化にも寄与しています。
計画段階のボトルネックをどう解消するか。限られた時間の中でいかに提案機会を最大化するか。そうした課題を抱える建設会社にとって、本事例は一つの具体的なヒントになるのではないでしょうか。



